食・地域・DX・ものづくりなど、多様な分野で開催されるセミナーやイベントの様子をレポートします。地域に広がる活動を“見える化”します。
2025年11月、東京都新宿区・JR新大久保駅ビル直結の食のコワーキングスペース「K,D,C,,,(キムチ・ドリアン・カルダモン)」にて開催された「地方<徳島>×Tech<ZEROCO> 6次産業未来会議」に、鳴門を拠点とするNARUTO BASEの登壇者として招かれました。
日時:2025年11月26日(水)18:30〜20:30
会場:K,D,C,,,(JR新大久保駅直結/東京都新宿区)
登壇者とトークテーマ:
・ZEROCO株式会社 笹野 正広 氏「ZEROCOの技術と徳島の名産物を使った挑戦」
・公益社団法人徳島県産業国際化支援機構 大久保 淳志 氏「徳島県における6次産業」
・NARUTO BASE 中野 寿仁「食・ビジネスをつなぐ地域共創モデル」
司会進行:
・株式会社スタジオホリデイ(K,D,C,,,コミュニティマネージャー) 安達 睦 氏
本イベントは、K,D,C,,,が全国の郷土料理と食文化をテーマに開催する「味な話」シリーズの第5弾です。徳島の名産物ポスターや大谷焼が飾られた会場で、郷土料理や食文化に触れながら、6次産業化や地域資源を活かした取り組みをテーマにトークセッションを行いました。
まずは徳島県名産のすだち酒で乾杯。ZEROCOで2か月ほど保存されていたすだち入りで、爽やかな香りと味を楽しみました。
徳島県では「6次産業化戦略」を策定し、年間約60品目の加工品開発を目標に掲げています。農業試験場に隣接した加工施設では、冷凍、レトルト、フリーズドライなどの設備を整備し、小ロット試作や加工セミナー、事業者連携の機会を提供しています。2023年度には40品目近い加工品が開発されました。
一方で、県内の農家の多くは家族経営など小規模で、生産と収穫に追われ、加工や販売まで手が回らないという課題があります。6次産業化には生産者・加工業者・販売者が連携し、地域全体で取り組む体制が必要との話がありました。
徳島県鳴門市を拠点とするNARUTO BASEでは、六つの食品製造許可(惣菜、食肉製品、菓子、アイス類など)を備えた加工場を運営し、県内生産者の初期段階の加工支援を行っています。鳴門金時のジェラート・パン、阿波金時豚の焼豚・ローストポーク、徳島県産の果物を使用したスムージーなど、地域食材を活かした商品化を実現しています。
小ロット生産により生産者がリスクを抑えて商品化に着手でき、試作、テスト販売、販路相談までを一体的に支援しています。商品によっては食品メーカーとの商談に発展するケースもあります。
徳島県内の農業現場では規格外品の活用が課題となっており、自らの素材を活かした新たなブランドづくりに意欲を持つ生産者が増えています。鳴門を拠点とするNARUTO BASEは、こうした県内生産者の商品開発や販路開拓を加工支援の立場から後押ししていきます。
また、徳島県が課題とするPR面の弱さに対しては、農業と観光・体験要素を組み合わせることで県外からの応援者となる消費者層を拡大し、徳島ブランドの向上や販路開拓につなげる可能性を紹介しました。
徳島県は、奈良漬や辛子れんこんの原材料など、県外加工品に使用される農産物を数多く生産しており、原材料産地としてのポテンシャルが高い地域です。ゆずの海外輸出に加え、県産すだちを使用したペッパーソース系調味料が40カ国以上へ輸出されている事例も紹介され、地域食材の市場性の高さが示されました。
一方で、品質の高い農産物が生産されているにもかかわらず、PRや販売設計の体制が十分とはいえず、商品としての魅力が市場に伝わりにくいという課題も指摘されています。適切な加工支援や保存技術、情報発信と組み合わせることで、さらなる価値創出が見込まれます。
ZEROCO株式会社は、農産物の鮮度保持を行う“0℃・高湿度保存技術”を開発するスタートアップです。ZEROCOの保存技術は、収穫から加工・流通までの時間を柔軟にコントロールできるため、6次産業化を進めるうえで重要な基盤となり得ます。
従来の冷凍は食味が落ちやすく、冷蔵は日持ちが短いという制約があるなかで、生産者が適切なタイミングで加工や出荷に取り組める選択肢として開発されたのがこの技術です。徳島県内の実証倉庫では、8月収穫の豊水梨を12月まで鮮度良好に保持、シャインマスカットの長期保存、すだちの容器別条件テストなどの検証が行われています。
この技術により、収穫期に集中する加工負荷の分散、規格外品の後日加工、フードロス削減が可能になります。物流面では、農産物を短期間保管して一定量をまとめてから輸送することで、積載効率の向上や輸送中の品質維持にも貢献します。将来的には、徳島県産の野菜や果実を生鮮状態のまま海外市場へ届ける選択肢も広がるとされています。
トークセッション後の交流会では、地元食材を活かした料理が振る舞われました。厚みがありながらもサクサク食べられる徳島れんこんの天ぷらやたけちくわ、噛むほどに味が広がるフィッシュカツなど、郷土で愛される味を堪能。料理を手にした参加者の笑顔と盛り上がりで、会場は終始賑やかな雰囲気に包まれました。
今回の議論を通じて、徳島県が持つ農産物のポテンシャル、小ロット加工による支援体制、そして保存技術による時間的・物流的な選択肢の広がりが示されました。NARUTO BASEは今後も、生産者や自治体、技術企業などと協働し、地域農産物の価値向上と持続的な産業づくりに取り組んでいきます。
徳島の農産物が持つ可能性は、地域を越えてさらに広がっていくと感じられるイベントとなりました。
■K,D,C,,,様によるイベントレポート
記事公開日:2025年12月16日
レポート執筆&撮影:佐藤裕子さん 結粋堂(フリーライター)
ブエナピンタ株式会社(THE NARUTO BASE)
• 電話:088-602-8882 (平日 9:00〜18:00)
• お問い合わせ方法:お問い合わせフォームよりご連絡ください。
• 所在地:〒772-0001 鳴門市撫養町黒崎字松島125(NARUTO BASE内)